ド底辺から業界3位までDDTを育てた男・髙木三四郎が語る「ど底辺から立ち上がる方法」
■限界感じ、サイバーエージェントに直訴
髙木は、普段から他団体の動向を気にかけている。主に利用するのはSNSだ。
「ある特定のキーワードを(検索窓に)入れるとぱっと出てくるんですよ。それを見て、どの選手に人気があるのか。どうして人気があるのかということを考えています」
DDTは選手もSNSを活用しており、選手の特性にあった投稿をしている。髙木は選手の個性に合った投稿ができるようにアドバイスをしているという。DDTは映像の活用も積極的だ。観客を楽しませるために試合前の煽り動画を流したり、他団体では見られないタイトルを作ったりしている。
特に面白いのが「アイアンマンヘビーメタル級王座」である。このベルトはいつでもどこでも公式戦などの試合形式を問わず、レフェリーによる王者の敗北判定さえあれば、王座が移動する。しかも挑戦資格はプロレスラー以外でも構わない。過去には芸能人、選手の母、試合会場の管理人といった一般人も戴冠経験がある。しかも人間じゃなくても問題ない。iPhone 13がチャンピオンとして認定されたこともある。
こうしたアイデアを考えついた髙木が、団体運営に限界を感じたのが2017年であった。同年3月さいたまスーパーアリーナで開催された旗揚げ20周年大会の客入りがきっかけだった。1万人のキャパに対して8000人は入るだろうと予想していたが、客数は5000人から6000人。予想を下回ってしまった。当時髙木はショックを受けて、明るい未来が見えなくなっていたという。そこでM&Aや資本業務提携といった形で大企業と一緒に運営していくことを決断したそうだ。
そんなとき、知人を介してサイバーエージェントグループのトップ・藤田普氏と会う機会を得た。そこで髙木は藤田氏にDDTのサイバーエージェントグループ入りを直訴する。
「さいたまスーパーアリーナ大会は一つのターニングポイントでした。そこで、何年この状態が続くんだろうな、という不安があったんですよ。だったら選択肢として、例えば大手の上場企業のグループに会社を参加させてもらうっていうのが、1番だと考えたんです。
藤田さんには、路上プロレスやさいたまスーパーアリーナ大会の動画を見せました。そうしたら『面白いですね。会社へ持ち帰ります』って答えてくれたんです。そこからはトントン拍子でグループ入りが決まりましたね」
おそらく話がスムーズに進んだのは試合だけではなかっただろう。DDTプロレスは会社登記してから経営をクリーンにしていた。一般にプロレスの興行というと反社会的な団体とのつながりを想像させるが、DDTは一切関わりを持たずに運営してきた。またプロレス団体はお金にもルーズなところが少なくないが、DDTはガラス張りにしており、サイバーエージェントグループの経理担当者がびっくりするほどきれいだった。これだけクリーンにやってきたのは、デビュー当時にプロレス団体の負の面を目の当たりにしたからだろう。
2017年9月、DDTプロレス、東京女子プロレスがサイバーエージェントグループ入りを果たし、現在も髙木が責任者として運営をしている。
髙木の目論見通り団体はさらなる成長を遂げ、DDTプロレスは2022年に旗揚げ25周年興行となる両国国技館大会を開催。2023年には「新幹線プロレス」を開き、プロレス界どころか、世間の話題もかっさらったのだ。